2022/11/02 01:00

不思議なこと 1


今日はあいにくの雨です。
こんな日はなぜか、R寺の古いお墓のコースに
足が向てしまいます。
傘をさしながら、雨に濡れた林の中を歩いていると
異世界に続く不思議ツアーの始まりです。


しばらくは、音楽の話題を書こうと思っていたのですが、
まだ書いていなかった不思議な出来事や話を
急に書きたくなったので、
音楽の話をちょっとお休みして、
閑話休題にお付き合いください。

わたしは、霊感とか心霊体験とかは、
ほぼないと自覚くしております。
ですが、こういう古い墓地などを歩いていますと、
人に近い霊的な存在は感じないのですが、
もっと古い、人ならざる者、妖しとか魔物的な者は
いるのではないか、と思うことがあります。
おそらく、ずっとこの地に住み着いて、なにかの拍子に、
近くを通った人間のアンテナに引っかかった時、
その存在をちらりとのぞかせるのでは?と、
思っています。

わたしがこの古い墓地のコースを
おさんぽしだした去年の春ごろのことです。

歩いていると、どこらかともなく
男の人の声が聞こえてきます。
男性の声というのはわかるのですが、
話の内容までは聞き取れません。

はじめわたしは、だれかお客さんがあって
お寺の人と話をしているのかなと思ったのですが、
どうも複数ではなく、ひとりの人が話しているようです。
あ、きっとお寺の人がお経を読んでるんだ、
と思ったんですが、どうもそういう感じでもない。
あいかわらず、なにを話しているのかはわかりませんが、
イメージとしては、男性アナウンサーのような美声で
ずっと抑揚なくしゃべり続けている感じです。

あ、わかった、ラジオだ。
ラジオで男性アナウンサーがニュースを読んでるんだ。
そうだ。そうに違いない。

わたしはそう思うことにして、おさんぽを続けました。
でも……、なにか引っかかる、なにか不自然なんです。

わたしがそこを通り過ぎる1分少々の間、
その声は、途切れることなく、
ずっとしゃべり続けているんです。

ちとょっと、おかしくないですか?
普通、ラジオのニュースでも
ニュースの切れ目があったり、
息継ぎをする瞬間があったりすると思うのですが、
ずっと、ずっとですよ、同じ調子で男性の声が
しゃべり続けているんです。
抑揚のないお経のように。

ただ、それだけのことかもしれない、
たまたまそういうタイミングのラジオを
聞いただけかもしれない。
けれどわたしはその時、
なにか、聞いてはいけないものを聞いてしまったような、
開けてはいけない”隙間”から
怪異を覗いてしまったような気がして、
うすら寒い恐怖を感じながら、
その場を後にしました。

その声を聴いたのは、その時が最初で最後でした。


このR寺の入り口には、この石碑が立っています。
でも、どこか不自然ですよね。

そうです。漢字の飛び出た一角がないんです。
わかりますか?

なにかで見たか、聞いたかしたのですが、
こういうものは、悪いものが取り付かないように
”角隠し”の意味があって、
漢字の”角”にあたる飛び出した一角を
わざと隠しているんだということです。

わたしはこのことを、
誰からか聞いたのか、なにかで読んだのか
まったく覚えがないのですが、
なぜかこのことだけは、
しっかりと記憶に刷り込まれているようです。